『櫻の園』

原作は吉田秋生の同名漫画『櫻の園』。で、1990年に中島ひろ子*1が主演で一度映画化。その時のつみきみほとかすごく良かったと思い出す。
オリジナルは毎年春の創立記念日チェーホフの『桜の園』を演じるのが伝統になっている女子校・桜華学園で演劇部に所属する少女たちの物語なのだが、今回は、過去のある事情によりチェーホフ桜の園」の上演が禁じられているお嬢様女子高に転校してきた元ヴァイオリニストの女の子が、その上演を復活させようとする話。つながりがあるんだかないんだか、それもわからん。その話を耳にした時は『櫻の園』という名前じゃなければ……と思ってしまった。
主演は福田沙紀、その他寺島咲、杏、大島優子はねゆり武井咲、菊川玲等々。
序盤、ヴァイオリンのシーンから旧校舎に忍び込むまでは、内心「やっぱり踏んだー」と思いながら観てた。が、演劇部の部室を観てニヤリとした。部屋の構造が1990年版と同じだ。そこから何故「櫻の園」を演じることが禁じられたのかという理由が明らかになるにつれ、過去のヴァージョンとの微妙な違いが明らかになる。2008年版は過去の部員の妊娠で「櫻の園」が禁じられた。1990年版にも部員の妊娠問題はあったが上演できた。もしかして、今回は上演できなかった場合の10年後のif話か?そう思ったら、意外に許せる気持ちになって見れた。
ラネーフスカヤ役の杏は明らかにファッションモデルなのに、雰囲気あるな、と思ったら、渡辺謙の娘か。女子高の花になってファンがたくさんいるのは、1990年版の同じラネフスカヤ役で倉田知世子の白島靖代と被る。そう観ていくと、ロバーヒン、ワーリャとアーニャ、舞台監督等々、なるほどと思う描写があちらこちらに見受けられる。おぅおぅなるほどな、作りこんである。
が、いい所ばかりではない。途中で投げ出したような急展開な解決方法は引いた。あと、菊川玲……。うーん。
1990年版のエンディングは私がもっとも好きなエンディングなのだが、今回は「櫻の園」のラストの言葉と掛けて、部室に鍵を掛けて舞台に向かう。違うということを明確にしつつ、舞い散る桜。
元ネタを知ってる人は、それを基にした別物と思ってみれば、結構面白いんとちゃうかなーと思うが、元ネタ知らない人には、是非1990年版の方が遥かに面白いよと言い切ってしまうぐらいのものかな。

*1:この時の演技でその年の新人賞を総なめ状態