『グラン・トリノ』*2

クリント・イーストウッドが監督と主演。それだけで観ない理由が無いのだが、これを最後に監督業に専念したいという話もあり、もしかするとスクリーンで観れる最後の機会になりかねないという切実な問題もある。
イーストウッドの役は、朝鮮戦争に従事した頑固な元軍人のじいさん。妻に先立たれ、息子たちに疎まれ、孫からはバカにされ、古くから住む自宅の周囲は貧困層の移民が増えてきた。そんな所に若い神父や隣に引っ越してきたベトナム移民の家族やらと対立してたけど、次第に……ってな感じ。『ミリオンダラー・ベイビー』の時のイーストウッドは声が掠れて聞き取れない感じだったのだが、今回はそれを逆手にとって、老人の息苦しさを感じさせる呼吸音が聞こえるほどにマイクが近く大きく音を拾っている。だから、多分音響の悪いところだと、より一層聞き取りにくいかもしれないが、そこそこ良い音響ならそれが凄く良い。
半ば棺おけに片足突っ込んでる様な爺さんなんだが、銃を構える姿は無茶苦茶格好よい。それとは対照的に皺だらけでよれよれの腕や咽喉、戦争時の記憶を話すときの苦しげな表情、格好良過ぎる。
ストーリー的には非常に単純だし、最後の選択も、それまでの経緯からすれば当然なんだが、全てに於いてイーストウッドの全身から溢れ出る説得力がそれ以外の結末を許さない。
本当に格好よい爺さんだ。