『ブラインドネス』*1

ジョゼ・サラマーゴ原作の『白い闇』*1フェルナンド・メイレレスが映画化。主演は、ジュリアン・ムーア。他には木村佳乃伊勢谷友介が日本人夫婦役で出ている。
物語は、とある日本人(伊勢谷友介)が交差点で信号待ちをしている最中に突然視界が白く染まり、目が見えなくなる。それを皮切りに視界が白く染まる謎の失明をする伝染病が広がってゆく。そんな中、眼科医の妻(ジュリアン・ムーア)だけが何故か失明しない。で、前半はその伝染病患者が隔離される施設内。後半は隔離施設を隔離出来無くなるほど感染が進行し街に失明した人々が溢れる。
設定はただ単純に「感染性の眼の病気で視界が白く染まり失明する」というだけ。登場人物のほとんどは名前が無く、仕事も役職も全て無意味になり、自分の食事や排泄、ただまっすぐ歩くことすらままならない状況に突如陥る。そんな時、一人だけ眼が見える状況。貴方ならどうする?的な問いが終始突きつけられているようだった。
実は、私は中学三年の時に両目とも1.5あった視力が二週間ほどで強烈な頭痛とともに右目だけ0.05に落ち、その次の一ヶ月で左目も0.2に落ちた。で、未だにその原因はわかってないし、未だ視力は落ち続けているんだが、もしかしたら見えなくなるというその恐怖。それを思い出してしまった。目が見えないというだけでいろんな事を諦めなくてはならない。普通に出来てた様々な事が出来ない。そのもどかしさ。その経験が妙にこの映画の怖さを促進させていた様に思える。
隔離施設内で以前から盲目だった人がいろいろ慣れている為に超人の様に振舞っている点、一人だけ見えるが故に周囲の世話に明け暮れるが見えるが故の苦悩、見えなくても求めるのは変わらない。人々の排泄物等で薄汚れていく施設内。見えないから裸で生活する人も。することが無いのと寂しさからか肌を重ねる人もいる。その中で暴走する人達も。まあ、暴走した人達が放送でスティービー・ワンダーの曲を歌いだしたときはちょい引いたけど。この辺りのロジックはありがちといえばありがちなんだが、直球で描いてて面白い。
街に出てからは、ゴミが溢れた街なんだが、突然の雨をシャワーにしてる人々の姿が異様に綺麗に見える。見た目は薄汚れているのだが、歓喜に満ち満ちているというのが、直接伝わってくるようだ。
ラストの展開はともかく、これは一度原作を読んでみたいな。

*1:白の闇 新装版