『アキレスと亀』

監督脚本北野武で、『TAKESHIS'』『監督・ばんざい!』に続く、芸術家としての自己を投影した三部作の最後の作品となるらしい。
出演は、ビートたけし樋口可南子徳永えり大森南朋、柳憂怜、麻生久美子、吉岡澪皇、中尾彬筒井真理子大杉漣等々。
人によって笑いのツボが違い過ぎるし、イロイロ皮肉が効いてるから、コメントしにくい。自分の一つのコメントや感想が自分の中で乱反射して多方向から突き刺さる。
アクションペンティングの滑稽な所作に笑える人はそれで楽しいかも知れないけど、あそこまでは無いにしろ、身に覚えがある人は全く笑えない。ウォーホル風タコ八郎、キャンベル缶風クジラの大和煮、リヒテンシュタインサイボーグ009キュビズムモドキとか、一瞬クスッとするけど、その笑いは十数年前の自分に突き刺さる訳だ。イタイイタイ。
画商が適当に付加価値を付けて好き勝手に値段をつけるのだが一般人の求める絵画とは掛け離れていたり、前世紀初頭デュシャンが美術館を否定したが画商が未だにそれを支配し続けてる様は各種映画賞に対する何か含みがあるんしないかと勘ぐってしまう訳だ。
才能とかセンスが無いモノに囚われてしまった故の先に進めないからこそのゼノンのパラドクス。だからアキレスと亀になるわけだ。で、一歩踏み出す事が出来るかどうかと言うだけなんだけどな。そんな事は置いといて、これに対してどうこう言うと、その人のイロイロ透けてきそうなモノがイロイロ仕込まれてる気がするので、観た人は色んな映画批評サイトのコメントを見比べてみると楽しいかも知れない。つか、私はそれが楽しいぞ、この映画に関しては。